辨 |
メハジキ属 Leonurus(益母草 yìmŭcăo 屬)には、歐亞に約20-25種がある。
モミジバキセワタ L. cardiaca(歐益母草) 歐洲・西アジア原産
ダッタンメハジキ L. deminutus(L.mongolicus;蒙古益母草) モンゴル・シベリア産
メハジキ L. japonicus(L.artemisia, L.heterophyllus;益母草・益母蒿・坤草)
『中薬志』Ⅱpp.356-360・Ⅲpp.158-160・『中国本草図録』Ⅲ/1351・『中国雑草原色図鑑』
シロバナメハジキ var. albiflorus(白花益母草) 『中国本草図録』Ⅶ/3318
キセワタ L. macranthus (var.villisissimus;大花益母草・大花鏨菜)
『中国本草図録』Ⅲ/1351・『中国本草図録』Ⅳ/1827
イヌキセワタ L. pseudomacranthus (L.macranthus var.pseudomacranthus;
鏨菜・山玉菜・白花益母草) 『中国本草図録』Ⅱ/0796
華北・遼寧・陝甘・安徽・江蘇産
ホソバメハジキ L. sibiricus L.(L.manshuricus; 細葉益母草・大花益母草・益母蒿・
四美草・風葫蘆草)『中薬志』Ⅱpp.356-360・Ⅲpp.158-160、『中国雑草原色図鑑』186
河北・山西・陝西・モンゴル・南シベリア産
L. tataricus(興安益母草・三裂益母草) モンゴル・シベリア産 『中国本草図録』Ⅴ/2288
L. turkestanicus(突厥益母草・新疆益母草・土耳其益母草) イラン・中央アジア産
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シソ科 Lamiaceae(脣形 chúnxíng 科)については、シソ科を見よ。 |
訓 |
「和名ハ目彈きノ意、小兒其莖ヲ短クシ之ヲまぶたニ張リ目ヲ開カセ遊ブ。産前産後ノ藥トス、故ニ益母草ノ漢名アリ。」(『牧野日本植物図鑑』) |
李時珍『本草綱目』(ca.1596)の釈名に、「此の草及び子(み)は、皆な茺盛・密蔚、故に茺蔚と名づく。其の功は婦人に宜しく、目を明らかにし精を益すに及ぶ。故に益母の称有り」と。 |
深江輔仁『本草和名』(ca.918)茺蔚子に、「和名女波之岐」と。
源順『倭名類聚抄』(ca.934)茺蔚に、「和名女波之木」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』11(1806)に、「茺蔚 メハジキ ニガヨモギ 益母草(ヤクモサウ)通名」と。 |
同属の草は、英語でも mother wort(母親の草)と呼ぶ。これらを婦人薬として用いたことから。 |
説 |
北海道・本州・四国・九州・琉球・朝鮮・臺灣・漢土全域・極東ロシア・東南&南アジア・濠洲東北部に分布。 |
誌 |
中国では、L. heterophyllus 及びホソバメハジキの全草を益母草(エキボソウ,yìmŭcăo)と呼び、成熟した果実を茺蔚子(シュウイシ,chōngwèizĭ)と呼び、薬用にする。『中薬志』Ⅱpp.356-360・Ⅲpp.158-160
また同属植物のうち、イヌキセワタ(鏨菜)の全草を薬用にする。 |
『爾雅』釋草に、「萑(スイ,zhuī)、蓷(タイ,tuī)」と、郭璞注に「今茺蔚(シュウイ,chōngwèi)也。葉似荏、方莖白華、華生節間。又名益母、『廣雅』云」と。 |
唐の則天武后(在位690-705)は、益母草を練って面に澤(つや)をだした、という。 |
『万葉集』巻7/1338に、
吾が屋前(にわ,やど)に生ふる土針(つちはり)心ゆも想はぬ人の衣(きぬ)にす(摺)らゆな
とある土針は、古くはツクバネソウと考えられてきたが、牧野は正体不明といい、松田はメハジキであるという。 |