辨 |
カノコソウ属 Valeriana(纈草 xiécăo 屬)には、世界に約200-400種がある。
V. amurensis(黑水纈草) 朝鮮・中国東北・極東ロシア産 『中国本草図録』Ⅵ/2858
カノコソウ(ハルオミナエシ) V. fauriei(蜘蛛七・珍珠七・地花椒)
ツルカノコソウ V. flaccidissima(柔垂纈草・岩邊香・蔓甘松)
V. jatamansi(V.wallichii;蜘蛛香・心葉纈草・馬蹄香・土細辛)
河南・陝西・両湖・西南・チベット・ヒマラヤ・インドシナ産 『中国本草図録』Ⅳ/1872
セイヨウカノコソウ V. officinalis(纈草・歐纈草・穿心排草;E.Valerian)
歐洲・カフカス・西アジア産 『中国本草図録』Ⅳ/1873
var. latifolia(寛葉纈草)
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スイカズラ科 Caprifoliaceae(忍冬 rĕndōng 科)については、スイカズラ科を見よ。 |
訓 |
和名カノコソウは、花序に紅白混じりあい、鹿子絞(かのこしぼり)に似て見えることから。それを漢字で纈草(けつそう)と書いた。
したがって、漢名で同属植物を纈草(ケツソウ,xiécăo)と呼ぶのは、和名の導入と言う。 |
小野蘭山『本草綱目啓蒙』12(1806)に、「春ノヲミナメシ 一名カノコサウ キヌマキ サクラガハグサ」と。 |
属名 Valerianus は、同名のローマ皇帝ウァレリアーヌス(253-260)に捧げられたもの。 |
説 |
Valeriana fauriei は、北海道・本州・四国・九州・朝鮮・臺灣・中国東北・極東ロシアに分布。
中国『植物智』はこれを Valeriana officinalis のシノニムとする。 |
誌 |
中国では、根・全草を薬用にする。また、同属植物のいくつかを、纈草の名で薬用にする。 |
ヨーロッパでは、セイヨウカノコソウの根(ワレリアナ根 Valeriana rhizoma)を、昔から薬草として、鎮静薬などさまざまに用いる。イギリスでは魔除の草とされたという。
日本では、カノコソウの根にワレリアナ根と同じ薬効があるものと考え、これを纈草根(後には吉草根と書いた)と呼ぶ。鎮静薬としてはワレリアナ根より纈草根のほうが有効と言い、日本薬局方に載る。 |