やなぎ (柳・楊) 

 ヤナギ科 Salicaceae(楊柳 yángliǔ 科)には、世界に54属 約1200種がある。

  イヌカンコ属 Casearia(脚骨脆屬)
世界の熱帯・亜熱帯に約160-230種
    イヌカンコ C. glomerata(C.merrillii;球花脚骨脆)
         
両広・雲南・チベット・ベトナム・インド産 
    ウスバイヌカンコ C. membranacea(膜葉脚骨脆)
臺灣・両広産 
    C. Velutina(C.balansae;脚骨脆・爪哇脚骨脆)
雲南・ジャワ・スマトラ産 
  セイロンスグリ属 Dovyalis(錫蘭苺屬)
 熱帯&南アフリカ・スリランカに約15-20種 
    セイロンスグリ D. hebecarpa(錫蘭苺)
スリランカ・熱帯アフリカ産 
  ルカム属(テンジクイヌカンコ属) Flacourtia(刺籬木屬) 旧世界の熱帯に15-23種 
    インドルカム
(テンジクイヌカンコ) F. indica(刺籬木)
    オオミイヌカンコ F. inermis
    ラモンチー F. ramontchi(大果刺籬木・挪挪果・棠梨)
    ジャワルカム F. rukam(大葉刺籬木) 
臺灣・両広・雲南・東南アジア・インド産
  タカサゴノキ属 Homalium(天料木屬)
世界の熱帯・亜熱帯に約180-200種 
    タカサゴノキ H. cochinchinensis(天料木)
臺灣・福建・江西・湖南・両広・越南産 
  イイギリ属 Idesia(山桐子屬)
  Itoa(梔子皮屬)
中国・ベトナム・ニューギニアに2種 
    I. orientalis(梔子皮)
  ヤマナラシ属 Populus(楊屬)
  ヤナギ属 Salix(柳屬)
  トゲイヌツゲ属 Scolopia(箣柊屬) 旧世界の熱帯・亜熱帯に約40種
    カイナントゲイヌツゲ S. chinensis(箣柊 cèzhōng)
福建・両広・東南アジア・インド産 
    トゲイヌツゲ S. oldhamii(魯花樹) 
琉球(南部)・臺灣・中国(南部)・東南アジアに分布
    S. saeva(廣東箣柊)
福建・広東産 
  Scyphostegia(杯蓋花屬)
1種 
    S. borneensis
  クスドイゲ属 Xylosma(柞木屬)
   
 ヤナギ属 Salix(柳 liǔ 屬)には、おもに北半球の亜熱帯~亜寒帯に約400-520種がある。

  セイヨウシロヤナギ S. alba(白柳)
         
北アフリカ・歐洲・ロシア・カフカス・西&中央アジア・中国(新疆・青海・甘粛)産 
  ケショウヤナギ S. arbutifolia(Chosenia macrolepis, C.bracteosa, C.arbutifolia)
         
日本(日高十勝・長野県梓川)・朝鮮(北部)・中国(東北)・ロシア(バイカル以東)産
  S. babylonica
    シダレヤナギ(イトヤナギ) var. babylonica(垂柳;E.Weeping willow)
    ペキンヤナギ var. matsudana(S.matsudana;旱柳;E.Pekin willow)
      ウンリュウヤナギ 'Tortuosa'(S.matsudana var.tortuosa;曲枝垂柳・龍爪柳)
  S. brachista(小墊柳 xiǎodiànliǔ)
 四川・雲南・チベット産 『雲南の植物Ⅰ』157
  バッコヤナギ
(ヤマネコヤナギ) S. caprea(S.bakko, S.hultenii;黃花柳;E.Sallow)
         
日本(北海道・本州近畿以東・四国)・朝鮮・中国(アルタイ)・ロシア・中央アジア・歐洲に分布 
  S. cardiophylla
    トカチヤナギ(オオバヤナギ) var. cardiophylla(S.urbaniana,
         S.maxmowiczii, S.urbaniana var.schneideri,
         S.cardiophylla var.urbaniana, Toisusu cardiophylla, T.urbaniana;
         大白柳)
         
日本(北海道・本州中部以北・鳥取大山)・朝鮮・中国(東北)・ロシア(シベリア・極東部)産
  S. carmanica(黃皮柳)
西アジア産 
  S. cathayana(中華柳)
華北・陝西・湖北・四川・雲南産 
  S. cavaleriei(雲南柳)
 広西・西南産 
  S. characta(密齒柳)
内蒙古・華北・陝甘・青海産 
  マルバヤナギ(アカメヤナギ) S. chaenomeloides(S.glandulosa;河柳)
         
日本(本州岩手山形以南・四国・九州)・朝鮮・中国(中部以南)産 
  S. cheilophila(烏柳・筐柳)
華北・西北・西南産 
  S. chekiangensis(浙江柳)
浙江産 
  S. chienii(銀葉柳)
華東・両湖産 
  S. cupularis(杯腺柳)
陝甘・青海・四川産 
  S. doii(S.morii;臺灣柳)
 臺灣産 
  S. dolichostyla
    シロヤナギ subsp. dolichostyla(S.jessoense, S.hondoensis)
北海道・東北・新潟県産
    コゴメヤナギ(コメヤナギ) subsp. serissifolia(S.serissifolia)
         
福島・新潟・関東・中部・近畿産 
  S. dunnii(長梗柳)
 浙江・福建・広西・広東産 『中国本草図録』Ⅶ/3049
  ジャヤナギ
(オオシロヤナギ) S. eriocarpa(長柱柳)
         
日本(本州東北南部以西・四国・九州)・朝鮮・中国(東北)・極東ロシア産
  S. ernesti(銀背柳)
四川・雲南産 
  S. fargesii(川鄂柳)
陝甘・湖北・四川産 
  S. fulvopubescens(褐毛柳)
  ミヤマヤチヤナギ S. fuscescens subsp. fuscescena(S.paludicola)
         
日本(大雪山)・朝鮮(北部)・中国(北部)・ロシア(シベリア・極東部)・北米(アラスカ・カナダ)産
  オオキツネヤナギ(オオネコヤナギ・キンメヤナギ) S. futura
  S. gordejevi(S.flavida;黃柳)
遼寧・内蒙古・甘粛産 
  S. gracilistyla
    ネコヤナギ(カワヤナギ・エノコロヤナギ) var. gracilistyla(細柱柳・銀芽柳・蒲柳・
         蒲楊・水楊;E.Chinese pussy willow)
    チョウセンネコヤナギ var. graciliglans
日本(本州近畿以西・四国・九州)・朝鮮産 
  S. heterochroma(紫枝柳) 山西・陝甘・両湖・四川産 『中国本草図録』Ⅹ/4551
  ユビソヤナギ S. hukaoana 
1972年発見 秋田・岩手・宮城・山形・福島・新潟・群馬の山間に産 
  S. hylematica
ヒマラヤ産『週刊朝日百科 植物の世界』6-236
  S. hylonoma(川柳)
河北・山西・陝甘・西南産 
  S. hypoleuca(小葉柳・山楊柳・紅梅蠟)
 陝甘・山西・湖北・四川産 『中国本草図録』Ⅵ/2532
  イヌコリヤナギ S. integra(杞柳 qǐliǔ)
    シダレイヌコリヤナギ f. pendula
  シバヤナギ(イシヤナギ) S. japonica
  S. kochiana(沙杞柳)
内外蒙古・シベリア産 
  コリヤナギ S. koriyanagi(S. purperea var. japonica;尖葉紫柳)
朝鮮・中国・千島・樺太産 
  S. kusanoi(水杜柳)
臺灣産 
  S. linearistipilaris(S.mongolica;筐柳・蒙古柳) 華北・陝甘産 
  S. lindleyana(靑藏墊柳 diànliǔ)
 雲南・チベット産 『雲南の植物Ⅰ』157
  S. luctuosa(絲毛柳)
陝西・四川・雲南・チベット産 
  S. microstachya(小穗柳)
内蒙古・東北産 
  S. miyabeana
    エゾノカワヤナギ subsp. miyabeana(S.lepidostachys)
         
日本(北海道)・朝鮮・中国・ロシア(シベリア・極東部)産 
    カワヤナギ
(ナガバカワヤナギ) subsp. gymnolepis(S.gilgiana)
  S. myrtillacea(坡柳) 甘粛・青海・四川・雲南・チベット・ヒマラヤ産 
  S. myrtilloides(越橘柳)
 中国東北産 
  S. nakamurana
    レンゲイワヤナギ
(タカネイワヤナギ・タカネヤナギ) subsp. nakamurana
長野県・千島・樺太産 
    エゾノタカネヤナギ subsp. yezoalpina(S.yezoalpina,S.cyclophylla)
         
大雪山・利尻島・千島産 
    ハイヤナギ
(ヒダカミネヤナギ) subsp. kurilensis(S.kurilensis, S.hidakamontana)
         
日高山脈・千島・カムチャツカ・ベーリング諸島産 
  エゾマメヤナギS. nummularia(S.pauciflora)
大雪山・白頭山・カムチャツカ・シベリア産 
  S. pentandra(五蕊柳)
東北・内蒙古・華北・陝西・新疆産 
  S. phanera(長葉柳)
甘粛・四川・雲南産 
  オオタチヤナギ
(コウライヤナギ) S. pierotii(白皮柳)
         
日本(北海道西南部・本州の北陸近畿中国・四国・九州)・朝鮮・中国(東北)・極東ロシア産 
  S. praticola(草地柳)
 両湖・西南産 『雲南の植物Ⅱ』147
  S. pyrolifolia(鹿蹄柳)
フィンランド・ロシア・中央アジア・中国北辺・極東ロシア産 
  S. rehderiana(川滇柳)
陝甘・青海・寧夏・四川・雲南・チベット産 
  ミヤマヤナギ(ミネヤナギ) S. reinii(深山柳)
    ムツノマルバミネヤナギ f. aomoriensis
    キヌゲミヤマヤナギ
(エゾミヤマヤナギ) f. eriocarpa(S.hidewoi)
  エゾヤナギ S. rorida(粉枝柳)
日本(北海道・上高地)・朝鮮・中国(東北・河北)・ロシア(シベリア・極東)産
  S. rosmarinifolia(細葉沼柳)
中国(東北)・ロシア・歐洲産  
    var. brachypoda(沼柳)
朝鮮・中国(東北・甘粛)・ロシア産 
  S. rosthornii(南川柳)
陝西・安徽・浙江・江西・両湖・四川・貴州産 
  コマイワヤナギ S. rupifraga
  エゾノキヌヤナギ
(ギンヤナギ・ウラジロヤナギ) S. schwerinii(S.petsusu;
         蒿柳・絹柳・柳芽子)
         
日本(北海道・本州中部以北)・朝鮮・中国(東北)・ロシア(極東部・シベリア)産 
    キヌヤナギ
(ウラジロキヌヤナギ) 'Kinuyanagi'(S.kinuyanagi)
  シライヤナギ S. shiraii
  S. sieboldiana
    ヤマヤナギ
(ハシカエリヤナギ) var. sieboldiana(S.buergeriana,S.saidaeana,
         S.daiseniensis, S.harmsiana, S.propitia)
         
本州近畿以西・四国・九州産 
    サツマヤナギ var. doiana
鹿児島・宮崎県産 
  S. sinica(S.caprea var.sinica;中國黃花柳)
華北・内蒙古・西北産 
  ノヤナギ S. subopposita
本州(中国地方西部)・四国(北西部)・九州(北部)・済州島産 
  S. suchowensis(簸箕 bòjī 柳)
河南・山東・江蘇・浙江北部産 
  S. taiwanalpina(臺高山柳)
臺灣産 
  S. takasagoalpina(臺灣匐柳)
臺灣産 
  S. tangii(周至柳)
山西・陝甘産 
  タライカヤナギ S. taraikensis
北海道・朝鮮北部・中国東北・千島・極東ロシア・シベリア産 
  テンジクヤナギ
(ヨツシベヤナギ) S. tetrasperma(四子柳)
         
中国(広東・雲南・チベット)・インドシナ・インドネシア・ヒマラヤ産 
  タチヤナギ S. triandra(S.subfragilis, S.nipponica, S.triandra var.nipponica;
         三蕊柳)
日本(北海道・本州・四国・九州)・朝鮮・中国(東北・河北・山東)・蒙古・ロシア・歐洲産 
  オノエヤナギ
(カラフトヤナギ・ヤブヤナギ・ナガバヤナギ) S. udensis(S.sachaliensis,
         S.makinoana;龍江柳)
  S. variegata(秋華柳)
河南・陝甘・湖北・西南・チベット産 『週刊朝日百科 植物の世界』6-247
  S. vulpina
    キツネヤナギ
(イワヤナギ) subsp. vulpina
 本州(関東北部以北)・北海道・千島産 
    サイコクキツネヤナギ subsp. alopochroa(S.alopochroa)
本州(愛知県以西)・四国・九州産
  S. wallichiana(皂柳 zàoliǔ)
 華北・内蒙古・浙江・陝甘・青海・両湖・西南・チベット産
         
『雲南の植物Ⅰ』160・『中国本草図録』Ⅹ/4552
  タイワンアカメヤナギ S. warburgii(水柳・臺灣水柳)
臺灣産 
  S. wilhelmsiana(綫葉柳)
内蒙古・甘粛・寧夏・新疆産 
  ヨシノヤナギ S. yoshinoi(S.pseudoyoshinoi)
本州(近畿・中国)・四国産  
    
 和名ヤナギは、漢字楊の音 yaŋ を、末尾に子音を補ってヤギ yaŋï と発音し、その鼻音を独立させてヤナギ yanaŋï となったものであろう、という(日本古典文学大系万葉集二1723註)。 
 源順『倭名類聚抄』(ca.934)に、楊は「和名夜奈木」と、柳は「和名之太里夜奈木」と。
 中国では、歴史的にはヤナギ科の植物を楊柳(ヨウリュウ,yángliǔ)と総称する。
 しかし唐代には、江南では楊柳の二字でシダレヤナギ(垂柳)を指し、北方では柳の一字でシダレヤナギを指していた。
 今日の華北では、柳といえばペキンヤナギ(旱柳)を指す。
 学名の属名 Salix は、ケルト語「水辺」に由来する。
 北半球の温帯・亜寒帯を中心として約300種がある。
 「大きな河川の中流部から上流にかけての流路の周りには、河床とか河原とか呼ばれる礫や粗い砂の積った部分がある。平常は広い陸地であるが、時折の出水時にはしばしば冠水し、また浸食を受けて地形が破壊されやすい。植物の立地としては不安定な場所で、裸地が多いが、川の氾濫の影響が少しでも弱まれば、一部の草本やヤナギ類、ハンノキ林など低木の芽生えが生じて初期の群落をつくる。これもまた破壊されたりするが、流路が変わって安定した場所には低木林や高木林が発達する。河岸沿いのほか、流水の中州にもこうした林の成長を見ることがある。
 一般に河辺林
(河畔林)と呼ばれるこれらの群落は、周辺の植生とも異なった景観をもち、しかも流水の作用との関連からさまざまな遷移段階が見られる。・・・
 流れの緩やかになる中流部では、浸食作用は弱まるが、洪水の際の冠水や泥の堆積の影響が出やすい。時々冠水したりまた減水時には表土の乾燥しやすい河原には、カワラホウコ・アキノキリンソウ・ノコンギク・ツルヨシなどの草本群落ができる。土壌の不安定なことが草原への移行を妨げている。泥の堆積地を中心にネコヤナギ・カワヤナギ・アカメヤナギなどヤナギ類が根を下ろす。ある程度の浸水には耐えるので低木群落をつくり、これがまた草本群落発達の足がかりともなる。」(沼田真・岩瀬徹『図説 日本の植生』1975)
 『大戴礼』「夏小正」正月に「柳 稊(てい。ひこばえ)す。〔稊なる者は、孚(ふ。はぐくむ、生まれる)を発するなり〕」と、また三月に「委たる楊(ヤナギ)あり。〔楊は則ち花さきて後に之を記すなり。〕」と。
 賈思勰『斉民要術』(530-550)巻5に「種槐・柳・楸・梓・梧・柞」が載る。
 シダレヤナギは中国原産、日本には奈良時代頃に入ったと言う。それ以来、日本では歴史的に柳(やなぎ)というものはシダレヤナギ
 ただし、よく花序の観賞用に栽培し、いけばなにも用いるのは、ネコヤナギ
 『日本書紀』巻15 顕宗天皇即位前紀に、弘計王(即位前の顕宗天皇)の歌として、

   いなむしろ かはそひやなぎ みずゆけば なびきおきたち そのねはうせず

が載る。まことに顕宗天皇(5世紀末頃)の歌であるならば、シダレヤナギの渡来する以前であるから、ここに詠われる柳は何らかの別のヤナギと言うことになる。
 しかしこの歌自体は、次のような形で平安時代にも歌われていた。

   河ぞひ柳風吹けば 動くとすれど根は静かなり (『栄花物語』)
 
 島崎藤村「千曲川旅情の歌」に、

     千曲川柳霞みて
     春淺く水流れたり

というのは、何ヤナギであろうか、現地で確かめる機会がまだない。
 『旧約聖書』詩篇137に、バビロニアの捕囚となった古代イスラエルの人々が、首都バビロンの流れのほとりに生えた柳の木に竪琴を掛け、故郷のシオンを思い出して涙を流した、とある「バビロンの柳」は、ポプラの仲間(ヤナギ科ヤマナラシ属)のコトカケヤナギ Populus euphratica であったという。

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