つばき (椿) 





 ツバキ科 Theaceae(山茶 shānchá 科)には、7-9属 約240-250種がある。

  ツバキ属 Camellia(山茶屬) 
      incl. Thea

  タイワンツバキ属 Polyspora(大頭茶屬)
 熱帯・亜熱帯アジアに約30-46種 
    タイワンツバキ P. axillaris(Gordonia axillaris var.nantoensis, G.axillaris,
         G.axillaris var.tagawae, G.shimadae;大頭茶)
         
臺灣産 『週刊朝日百科 植物の世界』7-153 
    P. balansae(Gordonia balansae, G.hainanensis;海南大頭茶) 海南島産 
    P. chrysandra(Goedonia chrysandra;黃葯大頭茶・雲南山枇花)
西南産 
    P. longicarpa(Gordonia longicarpa;長果大頭茶)
雲南産 
    P. speciosa(Gordonia acuminata, G.kwangsiensis;四川大頭茶・広西大頭茶)
         
広西・西南・越南産 

  ヒサカキサザンカ属 Pyrenaria(核果茶屬) 

  ヒメツバキ属 Schima(木荷屬)


  ナツツバキ属 Stewartia(紫莖属)

   
 ツバキ属 Camellia(山茶 shānchá 屬)には、東&東南アジア・ヒマラヤに約120-130(-215)種がある。
 (日本に自生するものに※印を付す)

  カイドウツバキ
(ハイドゥン)C. amplexicaulis(越南抱莖茶)
  ユカリツバキ C. assimilis
  シマサザンカ C. brevistyla(C.tenuifolia;短柱茶)
臺灣・福建・セッコウ・江西・安徽・両広産
  タイワンヒメツバキ C. caudata(長尾毛蕊茶・尾葉山茶)
         
臺灣・浙江・両広・ベトナム・ミャンマー・ヒマラヤ産 
    タイワンヒメツバキ var. gracilis
  C. chekiangoleosa(C.lucidissima;浙江紅山茶・紅花油茶・浙江紅花油茶)
         
福建・浙江・江西・湖南産 採油用に栽培
  C. cordifolia(心葉毛蕊茶・野山茶) 臺灣・両広・江西産 
  C. crapnelliana(C.gigantocarpa, C.latilimba;
         紅皮糙果茶・博白大果油茶・梨茶・大油茶・山桐茶)
  C. cuspidata
    トガリバサザンカ var. cuspidata(尖連蕊茶・尖葉山茶・火烟子)
    var. grandiflora(大花尖連蕊茶)
湖南産 
    var. chekiangensis(浙江尖連蕊茶)
浙江産 
  トンキンユチャ C. drupifera(越南油茶)
両広・インドシナ産 
  C. euphlebia(顯脈金花茶) 
広西産 『週刊朝日百科 植物の世界』7-143
  C. euryoides(C. parvilimba;柃葉連蕊茶・細葉連蕊茶・小葉山茶)
江西・広東産 
    ウスバヒメツバキ var. nokoensis(C.nokoensis;
         毛蕊柃葉連蕊茶・能高連蕊茶・能高山茶)
臺灣産 
  タイワンヤマチャ C. formosensis(C.chinensis f.formosensis)
  コバナユチャ C. forrestii(蒙自連蕊茶)
雲南産 
  シラハトツバキ C. fraterna(毛柄連蕊茶・連蕊茶)
華東産 
  グランサムツバキ C. granthaminana(大苞山茶・大白山茶)
広東産 
  C. grijsii(C. yuhsienensis;長瓣短柱茶・閩鄂山茶・攸縣油茶)
         
 福建・江西・湖北・広西・四川産 芳香性 『週刊朝日百科 植物の世界』7-143
  コウシュンサザンカ C. hengchunensis
  ホンコンツバキ C. hongkongensis(香港紅山茶・廣東山茶)
広東・越南産 
 ※ヤブツバキ
(ツバキ・ヤマツバキ) C. japonica(山茶;E.Common camellia, Rose camellia)
   ※シロバナヤブツバキ f. leucantha
    ヤクシマツバキ
(リンゴツバキ) var. macrocarpa
  ヒマラヤサザンカ
(ヒマラヤツバキ・トガリバサザンカ) C. kissi(落瓣短柱茶・落瓣油茶)
         
両広・雲南・インドシナ・ヒマラヤ産 
 ※ヒメサザンカ
(リュウキュウツバキ) C. lutchuensis(Theopsis lutchensis;臺灣連蕊茶)
         
南西諸島(沖永良部・沖縄・久米・石垣・西表)・臺灣産
  C. mairei
    var. mairei(毛蕊紅山茶)
広西・西南産 
    var. veltina(滇南毛蕊山茶) 
  テマリツバキ C. maliflora(櫻花短柱茶)
栽培種 
  ユチャ
(アブラツバキ) C. oleifera(油茶)長江以南で採油用に栽培
        『中国本草図録』Ⅳ/1745・『週刊朝日百科 植物の世界』7-141
    var. confusa(野油茶) 『中国本草図録』Ⅷ/3694
    var. monosperma(單籽油茶・小果油茶)
 湖南・江西・両広産 『中国本草図録』Ⅹ/4746
  カイナンチャ C. paucipunctata(腺葉離蕊茶)
海南島産 
  キンカチャ C. petelotii(C.nitidissima, C.chrysantha;金花茶)
『中国本草図録』Ⅰ/0210 
  ピタールツバキ C. pitardii(西南紅山茶) 湖南・広西・西南産 白・桃色の大花
        『雲南の植物Ⅱ』92・『週刊朝日百科 植物の世界』7-142
    ヤマトウツバキ f. simplex
    var. yunnanica(窄葉西南紅山茶・雲南野山茶)
 西南産 
        『雲南の植物Ⅱ』92・『週刊朝日百科 植物の世界』7-142
  C. polyodonta(宛田紅花油茶)
 採油用・観賞用(赤花)に栽培。
        『週刊朝日百科 植物の世界』7-142
  トウツバキ C. reticulata(滇山茶・南山茶・雲南茶花・雲南山茶花)
        
雲南産 観賞用に栽培、赤花。『週刊朝日百科 植物の世界』7-140
    f. simplex(雲南紅花油茶)
 採油用に栽培
  C. rosiflora(玫瑰連蕊茶)
浙江・江西・湖北・四川産 英国では栽培 
  C. rosthorniana(川鄂連蕊茶)
両湖・広西・四川産 
 ※ユキツバキ
(オクツバキ・サルイワツバキ) C. rusticana(C.japonica var.decumbens,
         C.japonica var.rusticana)
東北・北陸の日本海側に産 
  ヤナギバサザンカ C. salicifolia(柳葉毛蕊茶・柳葉山茶・毛葉山茶)
         
臺灣・福建・江西・湖南・両広産 
  サルウィンツバキ C. saluenensis(怒江紅山茶)
雲南・四川産 
        
『雲南の植物Ⅱ』92・『週刊朝日百科 植物の世界』7-143
 ※サザンカ C. sasanqua(C.miyagii, Thea miyagii)
  C. semiserrata(南山茶・廣寧油茶)
両広産
 ※チャノキ
(チャ) C. sinensis(f.macrophylla,f.parvifolia, Thea sinensis;茶;E.Tea)
    アッサムチャ var. assamica(C.assamica;普洱茶)
  タイワンヒメサザンカ C. transarisanensis(阿里山連蕊茶)
 臺灣産 
  テリバヒメサザンカ C. transnokoensis 
  ウラク
(タロウカジャ) C. uraku(C.wabisuke f.uraku;單體紅山茶)
  ワビスケ C. wabisuke
  ウンナンツバキ C. yunnanensis(五柱滇山茶・猴子木) 雲南・四川産 
   

 以上のほか、次のような品種を掲載する。

   アカシガタ(明石潟) 'Akashigata'
   エイラク(永楽、黒侘助)
   エンシ(艶姿)
   オオカラコ(大唐子)
   オトメツバキ(乙女椿)  C.japonica 'Rosacea'
   カモホンナミ(加茂本阿弥)
   カンツバキ(寒椿)  C.sasanqua 'Shishigashira'
         (C.sasanqua var.fujikoana, C.×hiemalis)
   カンヨウタイ(寒陽袋)
   キクサラサ(菊更紗)
   キシュウツカサ(紀州司)
   コウオトメ(紅乙女)
   コウキリン(紅麒麟)
   コチョウワビスケ(蝴蝶侘助) cv. Bicolor 
古くから京都で栽培
   シボリオトメ(絞乙女)
   シュンショコウ(春曙光)
   シラギク(白菊)
   シラタマ(白玉) 
   シロワビスケ(白侘助) C.wabisuke cv. Wabisuke
   スキヤ(モモイロワビスケ)(数奇屋)
   セイオウボ(西王母)  C.'Seiobo'
 古くから加賀金沢で栽培
   チュウブタマテバコ(中部玉手箱)
   ハクジシ(白獅子)
   ハクハイ(白盃)
   ハクロニシキ(白露錦)
   ハスミジロ(蓮見白)
   ハツカリ(初雁)
   ヒグラシ(日暮) 
   ベニワビスケ(紅侘助) C.wabisuke cv. Campanulata
   ボクハン(卜伴)  C.japonica 'Bokuhan'
   ボクハンニシキ(卜伴錦) 
   ホンシラタマ(本白玉) 
   ムルイシボリ(無類絞)
   ヤエヒメ(八重姫) 
    
 なお 夏椿は、同じツバキ科だが 別のナツツバキ属 Stewartia に属し、ナツツバキヒメシャラなどがある。 




 和名つばきの称謂は古く、『古事記』雄略記に載る大后の歌に「都婆岐」、『万葉集』には「都婆吉」「都婆伎」とある。
 その由来については、艶葉木(つやはき)の意、厚葉木(あつはき)の意、など諸説がある。
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)椿木に、「和名都波岐」と。
 源順『倭名類聚抄』
(ca.934)椿に「和名豆波木」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』
(1806)32 山茶に、「ツバキ」と。
 つばきは、辨の欄に挙げた、日本に産するツバキ属の植物の総称であったであろう。そのうちからさざんかを区別するようになるのは、15世紀以降である。サザンカを見よ。
 漢語では、椿(チン,chūn)は、センダン科の落葉高木チャンチン Toona sinensis(Cedrela sinensis;香椿・椿・紅椿・椿樹・春芽樹)や、ニガキ科の落葉高木ニワウルシ Ailanthus altissima;臭椿・椿樹・樗)などを指す。
 従って、日本でツバキに椿の字をあてるのは誤り。椿の字の本義を知らないままに、春に花を開く木と言うので椿の字を用いたのだろうとされる。ツバキに椿をあてるのは、『出雲風土記』に始まり、『新撰字鏡』に受け継がれた。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)32 山茶の条に、「本邦ニテ古ヨリ椿ノ字ヲツバキト訓ズルハ タマツバキノ古訓ヲ誤リタルナリ、其タマツバキト云ハ今俗ニキヤンチント呼者ニシテツバキノ類ニ非ズ」と。
 中国では、隋唐以来、海石榴(カイセキリュウ,hăishíliú)という植物が文献に現れる。
 石榴・柘榴(セキリュウ,shíliú)はザクロであるから、海石榴は「海から来た
(引いては外国から来た)ザクロ」の意である。ザクロは外来の植物で、前漢のとき張騫が安息(ペルシア)より持ち来たったものと伝えられており、六朝以前には奈林などと表記されてきたが、唐代から石榴と表記するようになったという。
 日本では、『出雲国風土記』意宇
(おう)郡の条、草木を列挙する中に、「海榴、字或作椿」(海榴は、テキストによっては 或は同書中別の条では、海石榴・海柘榴と三字に作る)とあることなどから、海石榴とはツバキであるとする。『万葉集』でも、この字を「つばき」と読み、ツバキを表した。
 源順『倭名類聚抄』(ca.934)に「椿 唐韻云、椿。〔勅倫反。和名豆波木〕。木名也。楊氏漢語抄云、海石榴。〔和名上同。本朝式等用之〕。」と。
 海石榴がツバキであるとする立場からは、次のような説明がなされている。すなわち、中国南方の花木であったトウツバキが中原(黄河流域)にもたらされるより先に、日本からヤブツバキが中国にもたらされ、これがザクロのように赤い花を開くので、「海から来たザクロ(海石榴)」と呼ばれた、そののちトウツバキが中原にもたらされ、それは「山茶」と呼ばれた、と。
 しかし、今日の中国では、「海石榴」「海榴」はともにザクロの別称とする。このばあい、海石榴の語は、「石榴のうち海から来たもの」の意ではなく、ザクロそのものの持つ 外国から来たという属性を示すものと解釈する。
 
(このほか、「海石榴」を、朝鮮半島に産するザクロ科の植物であるチョウセンザクロ Punica nana とする見解もある。)
 このように、7-8世紀に中国や日本で海石榴と呼ばれた植物が何であったのか、国際的には必ずしも定説を見ていない。
 学名の属名 Camellia は、17世紀の宣教師カメル G.J.Kamell から。彼は、マニラに住み、東アジアの植物を採集した。リンネ(1707-1708)は、そのカメルに因んでこの属名を立てた。


 トウツバキ C. reticulata は、雲南省サルウィン川流域の原産、栽培化されたのは明時代。日本には、延宝(1673-1681)年間に入る。
 
「トウツバキは葉の表面がツバキよりつやがなく、葉脈が網目状にはっきりへこみ、めしべは短い毛でおおわれる。花弁は波立ち、八重咲きの中には牡丹の花のようなものがある。一般に大輪で直径が一〇センチを超す。欠点は密に茂りにくく、寒さにやや弱いこと。このため、苗木の間は関東地方でも防寒しなければならない」(湯浅『花の履歴書』)
 トウツバキは、ヨーロッパにはリチャード・ローにより1820年に入り、その品種はキャプテン・ローの名で広まった。
 ヤブツバキは、ヨーロッパへは、一説に16世紀に日本からポルトガルに入ったといい、一説に1682年に長崎の出島に来たドイツの医師A.クライヤーが紹介したという。イギリスには 18世紀初に渡った。




 日本におけるツバキの花の文化史は、ヤブツバキの誌を見よ。
 古代の日本には、各地に「つばきち」という市があった。
 『万葉集』『日本書紀』『風土記』などに海石榴市と記され、『元興寺縁起』に都波岐市、『延喜神名式』因幡国八上郡十九座の内に都波只知上神社二座などとあり、ツバキチと読んだことが知られる。この市は平安時代にも引き続き存在しており、清少納言『枕草子』第14段「市は」の中に「つばいち」が見られる。

 奈良県桜井市金屋にあった海石榴市は、かつては市が開かれ、歌垣が行われた場所。今も椿市観音・椿市地蔵があるという。『日本書紀』巻16、武烈天皇即位前紀に、皇太子時代の武烈天皇が「海石榴市」の「歌場〔
歌場、此をば宇多我岐(うたがき)と云ふ〕の衆(ひとなか)に立」ちまじって、大臣(おほおみ)平群真鳥臣(へぐりのまとりのおみ)の子 鮪(しび)と影媛(かげひめ)を争ったとある。
 この海石榴市の歌垣は、『万葉集』にも次のように歌われている。

   海石榴市の 八十
(やそ)の衢(ちまた)に 立ちならし 結びし紐を 解かまく惜しも
      
(12/2951, 読人知らず)
   紫は 灰指す物ぞ 海石榴市の 八十の街に あひし児や誰
   たらちねの 母がよぶ名を 白
(まを)さめど 路行く人を 孰(たれ)と知りてか
       
(12/3101;3102, 読人知らず「問答の歌」)

 『日本書紀』巻7、景行天皇12年10月の条に載る次の話は、大分県にあった海石榴市という地名の起源説話。
 「則ち海石榴樹
(つばきのき)を採りて、椎(つち)に作り兵(つはもの)にしたまふ。因りて猛き卒(いくさ)を簡(えら)びて、兵の椎を授けて、山を穿ち草を排(はら)ひて、石室(いはむろ)の土蜘蛛(つちぐも)を襲ひて、稲葉の川上に破りて、悉(ふつく)に其の党(ともがら)を殺す。血流れて踝(つぶなき)に至る。故(かれ)、時人(ときのひと)、其の海石榴の椎を作りし処(ところ)を、海石榴市と曰(い)ふ。亦血の流れし処を血田(ちた)と曰ふ。」(『出雲国風土記』大野郡の海石榴市・血田の条に、ほぼ同じ話を載せる。) 

 今日、海石榴市の語源については、ツバキの灰などが取引された市、ツバキの生えている市、などが行われている。
 フランスの小説家 デュマ子 Alexandre Dumas fils(1824-1895)は、『椿姫(椿の花を持つ女) La Dame aux Camellia(1848小説;1849戯曲)において、パリの高級娼婦マルグリット・ゴーティエに、赤い(日によって白い)椿のコサージュを身に着けさせた。この小説は大評判を呼び、戯曲は名女優サラ・ベルナール Sarah Bernhardt(1844-1923)の当り役となり、一世を風靡した。
 イタリアの作曲家ヴェルディ
Giuseppe Verdi(1813-1901)は、パリでこの舞台を見て感動し、歌劇『トラヴィアータ(道を踏み外した女) La Traviata(1853初演)を作曲した。
 なお、この小説・戯曲・歌劇とも、日本では椿姫の名で、中国では茶花女 cháhuānü の名で親しまれている。
白椿の一種  2004/12/22 学内
ジュラク(聚楽)  2005/04/03 (天ケ下か? それなら一重のはずだが・・・)



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