こなら (小楢) 

学名  Quercus serrata subsp.serrata var.serrata (Q.glandulifera)
日本名  コナラ
科名(日本名)  ブナ科
  日本語別名  ハハソ(ホウソ)、ナラ、ナラシバ
漢名  枹櫟(ホウレキ,bāolì)
科名(漢名)  殻斗(カクト,kédǒu)科
  漢語別名  枹樹(ホウジュ,bāoshù)、靑棡樹(セイコウジュ,qīnggāngshù)、柞木(サクボク,zuòmù)
英名  
2010/04/09 入間市宮寺

2009/04/20 仙台市東北大学植物園

2006/04/15 野川公園
以下、いずれの写真も、垂れ下がっているのは雄花序。

2007/04/13 清瀬市中里 2007/04/13 三芳町竹間沢

2007/04/21 入間市宮寺

2007/04/29 神代植物公園

2007/07/26 野川公園自然観察園

2007/09/04 入間市宮寺

2006/12/07 神代植物公園

2006/10/19 神代植物公園


2008/02/21 野川公園自然観察園

2008/04/24 入間市宮寺

 Quercus serrata には、次のような亜種・変種・品種がある。

  subsp. serrata
    コナラ var. serrata
      アオナラ f. concolor
      テリハコナラ f. donarium
    マルバコナラ
(ビワバコナラ) var. pseudovariabilis
    タイワンコナラ var. brevipetiolata(枹樹・靑棡樹)朝鮮・中国・臺灣に分布 
  フモトミズナラ subsp. mongolicoides(Q.mongolicoides) 
   
 ブナ科 Fagaceae(殻斗 カクト,kédǒu 科) コナラ属 Quercus(櫟 lì 屬) は、次の2亜属からなる。

  コナラ亜属 subgen. Quercus(櫟 lì 亞屬)
      
広く世界に約300種がある。このグループの植物を、和語で「なら」と総称する。 
  アカガシ亜属 subgen. Cyclobalanopsis(靑棡 qīnggāng 亞屬)
      
アジアの熱帯・亜熱帯を中心に約150種がある。このグループの植物を、和語で「かし」と総称する。 

 これらの2亜属は、それぞれ属 genus として扱うことがある。
 ブナ科 Fagaceae(殻斗科)については、ブナ科を見よ。
 英名で Quercus の総称を、oak と言う。
 源順『倭名類聚抄』(ca.934)に、楢は「漢語抄云、奈良」と、柞は「和名由之、漢語抄云波々曽」と。
 漢名の柞木(サクボク,zuòmù)は、クヌギクスドイゲにも用いる。
 日本(温帯下部から暖帯)・朝鮮・中国(長江流域を中心に、北は山東・河南・陝西、南は広西まで)に分布。
 関東地方では二次林の代表樹種であり、シデクヌギなどとともに雑木林を構成し、里山として利用される。
 落葉は堆肥とし、粗朶は薪に、二三十年に一度伐られる材は炭にする。団栗は、灰汁抜きすれば食用になる。
 日本では、古くから身近にあった木。

 『万葉集』に、

   山科の石田
(いわた)の小野のははそ原見つつかきみ(君)が山道(やまぢ)越ゆらむ
      
 (9/1730,藤原宇合)
   御かり
(み狩)する雁羽の小野の櫟柴(ならしば)のなれ(馴れ)は益(まさ)らず恋こそ益れ
      
(12/3048,読人知らず)
   しもつけの
(下毛野)みかも(美可母)のやま(山)のこなら(小楢)のす
      まぐは
(麗)し児(こ)ろはた(誰)がけ(笥)かも(持)たむ (14/3424,読人知らず)

 また、「ははそ葉の」は 「母」にかかる枕詞。

   ちちの実の 父のみこと ははそ葉の 母のみこと
   おぼろかに 情
(こころ)尽して 念(おも)ふらむ 其の子なれやも・・・
     
(19/4164,大伴家持)
   大王の まけ
(任)のまにまに 島守に わがたちくれば
   ははそば
(葉)の はは(母)のみことは みも(御裳)のすそ(裾) つみあげかきなで
   ちちのみの ちち
(父)のみことは たくづの(栲綱)の しらひげ(白鬚)のうへ(上)
   なみだ
(涙)たり なげ(嘆)きのたばく・・・ (20/4408,防人の歌)
      
(「ちちの実」については、イヌビワを見よ。)
 
 『八代集』等に、

   たがための 錦なればか 秋ぎりの さほの山べを たちかくすらむ
     
(紀友則「やまとのくににまかりける時、さほ山にきりのたてりけるをみてよめる」、『古今集』)
   秋霧は けさはなたちそ さほ山の はゝその紅葉 よそにてもみん
      (よみ人しらず、『古今集』)
   さほ山の はゝその色は うすけれど 秋は深くも なりにけるかな
      (坂上是則、『古今集』)
   さほ山の はゝその紅葉 ちりぬべみ よるさへ見よと てらす月影
      (よみ人しらず、『古今集』)

   夏山の ならの葉そよぐ 夕暮は ことしも秋の ここちこそすれ
     
(源頼綱、『後拾遺集』)
   我が宿の 外面にたてる 楢の葉の しげみにすずむ 夏はきにけり
     
(恵慶、『新古今集』)
   入日さす 佐保の山べの 柞
(ははそ)原 くもらぬ雨と 木の葉ふりつつ
     
(曾根好忠、『新古今集』)
   ははそはら 滴も色や かはるらん 杜の下草 秋深
(ふ)けにけり
     
(藤原良経、『新古今集』)
   時わかぬ 浪さへ色に いづみ川 柞の杜に 嵐吹くらし
     
 (藤原定家、『新古今集』)
   さびしさを いかにせよとて 岡べなる 楢の葉しだり 雪のふるらん
     
(藤原国房、『新古今集』)
   みそぎする ならのを川の 河風に 祈りぞわたる 下にたえじと
     
(八代女王、『新古今集』)
   風そよぐ ならの小川の 夕暮は みそぎぞ夏の しるしなりける
     
(藤原家隆、『新勅撰集』『百人一首』。みそぎは 六月祓)

 西行
(1118-1190)『山家集』に、

   夏山の ゆふ
(夕)したかぜの すずしさに ならのこかげの たゝまうき哉
   やど
(宿)かこふ ははそのしば(柴)の 時雨さへ
      した
(慕)ひてそむる はつしぐれかな
   あはれにぞ ものめかしくは きこえける かれたるならの しばのおちばは
 
 ところで、『万葉集』に、

   奈良山の児手柏の両面
(ふたおもて)にかにもかくにも佞人(ねじけひと)の友
      
(16/3836,消奈行文)
   ちば
(千葉)のぬ(野)のこのてかしはのほほ(含)まれど
     あやにかなしみお
(置)きてたかき(来)(20/4387,大田部足人)

 コノテガシワが日本に入ったのが近世と思われるので、この「このてかしは」はコノテガシワではないらしいが、それでは一体何かというについては諸説が有り、定まらない。
 近年、コナラの若葉が 子供の手のように皺があることを云うのだとして、コナラとする説が有力なようである。
 近代では、
 ・・・
 楢の類だから黄葉する。黄葉するから落葉する。時雨がささやく。凩(こがらし)が叫ぶ。一陣の風小高い丘を襲えば、幾千万の木の葉高く大空に舞うて、小鳥の群かのごとく遠く飛び去る。木の葉落ち尽せば、数十里の方域にわたる林が一時に裸体になって、蒼ずんだ冬の空が高くこの上に垂れ、武蔵野一面が一種の沈静に入る。空気が一段澄み渡る。遠い物音が鮮かに聞える。・・・
            
国木田独歩「武蔵野」(1898)より
  



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