辨 |
ソバ属 Fagopyrum(蕎麥 qiáomài 屬)には、中国西南・ヒマラヤに約15-28種がある。
シャクチリソバ(シュッコンソバ) F. dibotrys(F.cymosum, F.acutatum;金蕎麥・天蕎麥)
野生種、中国南部乃至ヒンドゥークシュ山脈に分布。『中国雑草原色図鑑』18
ソバ F. esculentum (蕎麥)
'高嶺ルビー'(アカバナソバ) 氏原暉男作出,1993/01品種登録
ダッタンソバ(ニガソバ) F. tataricum(Polygonum tataricum;苦蕎麥)
雲南原産、広く歐亞で栽培 『中国本草図録』Ⅸ/4084・『中国雑草原色図鑑』19
『全国中草葯匯編』下/359
F. tibeticum(Parapteropyrum tibeticum;翅果蓼) チベット産
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タデ科 Polygonaceaee(蓼 liăo 科)については、タデ科を見よ。 |
訓 |
「和名そばハ稜麥ノ略ナリ、そばハ稜ニテ其かどアル實ヨリ云ヒ麥ハ其實ヲむぎニ擬セシナリ」(『牧野日本植物図鑑』)。詳しくは『日本国語大辞典 第二版』を参照のこと。
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『本草和名』高麦に、「和名曽波牟岐」と。
『倭名類聚抄』蕎麦に、「和名曽波牟岐、一云久呂無木」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』18 蕎麦に、「ソバムギ和名鈔 クロムギ同上 ソバ」と。 |
漢名の蕎は、背が高く(喬)伸びる草の意。麦は、ムギと同様に実を粉にして麪(メン,mian)にして食うことから。 |
説 |
かつてシベリアのバイカル湖から中国東北地方の原産と考えられたが、今日では雲南原産とする説が有力という。
中国へは唐代に入った。 |
日本では、5世紀半ばにはあったことが 花粉分析(長野県野尻湖底)から知られる。
文献の上では、奈良時代には救荒作物として栽培されていたことが知られる(『続日本紀』722年)。 |
ヨーロッパに渡ったのは、13-14世紀頃。英米では家畜の飼料にするほか、そば粉 buckwheat flour から パンケーキを作る。 |
誌 |
粒食・粉食されるが、粉食の方法は古くは「蕎麦掻(そばがき)」、慶長年間(1596-1615)ごろから「蕎麦切(そばきり)」が一般化した。そばはグルテンを含まないので、そば切りには 一般的には小麦粉をつなぎとして加える。
そのほか、饅頭・ぼーろなどの菓子として食い、また焼酎などの原料として用いる。
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三日月に地はおぼろ也蕎麦の花 (芭蕉,1644-1694)
蕎麦はまだ花でもてなす山路かな (同)
麓なる我(わが)蕎麦存す野分(のわき)哉 (蕪村,1716-1783)
落(おつ)る日のくゝりて染(そむ)る蕎麦の花 (同)
故郷(ふるさと)や酒はあしくとそばの花 (同。類句に「帰去来(かえんなん)酒はあしくもそばの花」)
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いささかの為事(しごと)を終へてこころよし夕餉(ゆふげ)の蕎麦をあつらへにけり
(1916,斉藤茂吉『あらたま』)
朝寒ともひつつ時の移ろへば蕎麦の小花に来ゐる蜂あり
(1945「疎開漫吟」,齋藤茂吉『小園』)
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