いぐさ (藺草)
学名 |
Juncus decipiens (J.effusus var. decipiens) |
日本名 |
イグサ |
科名(日本名) |
イグサ科 |
日本語別名 |
イ、トウシンソウ(燈心草) |
漢名 |
疏花燈心草(ソカトウシンソウ,shūhuā dēngxīncăo) |
科名(漢名) |
燈心草(トウシンソウ, dēngxīncăo)科 |
漢語別名 |
燈心草(トウシンソウ, dēngxīncăo)、石龍蒭(セキリョウスウ,shílóngchú) |
英名 |
Common rush, Mat rush |
2009/05/10 入間市宮寺 |
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2024/05/15 武蔵村山市岸 |
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2023/05/27 入間市宮寺 |
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2007/06/19 小石川植物園 |
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2009/08/09 秋ヶ瀬 |
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辨 |
イグサ科 Juncaceae(燈心草 dēngxīncăo 科)には、南北両半球に7属約440種がある。
イグサ属 Juncus(燈心草屬)
スズメノヤリ属 Luzula(地楊梅屬)
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イグサ属 Juncus(燈心草 dēngxīncăo 屬)には、世界に約200-240種がある。
ハナビゼキショウ J. alatus(翅莖燈心草)
J. amplifolius(走莖燈心草・草香附)
カラフトハナビゼキショウ J. articulatus
(J.lampocarpus;小花燈心草)『中国雑草原色図鑑』350
カラフトハナビゼキショウ subsp. limosus(小花燈心草)『中国雑草原色図鑑』350
クナシリコウガイ subsp. tatewakii
J. benghalensis ヒマラヤ産
ミヤマイ(タテヤマイ) J. beringensis
ホクトイ J. biglumis
ヒメコウガイゼキショウ J. bufonius(J.minutulus;小燈心草)
カナダコウガイゼキショウ J. canadensis
クロコウガイゼキショウ J. castaneus(J.satakei;栗花燈心草)
チョウセンクロコウガイゼキショウ subsp. triceps(J. triceps;三頭燈心草)
J. concinnus(蔥状燈心草)ヒマラヤ産
シナダレクサイ J. coriaceus
セキショウイ J. covillei(J.prominens, J.falcatus subsp.prominens)
イグサ(イ・トウシンソウ) J. decipiens(J.effusus var.decipiens;
疏花燈心草・燈心草) 『中国雑草原色図鑑』350
オキナワイ f. filiformis 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
タマイ f. glomeratus 花序が球状にかたまる
ヒメイ f. gracilis 山地に生じ、痩せて細い
コヒゲ 'Utilis'(石龍蒭) 畳表・御座などの材料を採る
ラセンイ 'Spiralis'
ヒロハノコウガイゼキショウ J. diastrophanthus(J.yakeisidakensis;螃蟹脚)
タマコウガイゼキショウ var. togakusiensis
アメリカクサイ J. dudleyi(J.tenuis var.dudleyi)北アメリカ原産
J, effusus(J.communis;燈心草・燈芯草)
遼寧・吉林・黑龍江・華北・華東・臺灣・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南から
北半球の温帯及び南米西部・アフリカ一部に産(日本には不産)
J. elegans(雅燈心草)
ミクリゼキショウ(クロミクリゼキショウ・オオミクリゼキショウ) J. ensifolius
(J.oligocephalus)
ホソコウガイゼキショウ J. faurieanus(J.tokubuchii)
イヌイ(ヒライ・ネジイ) J. fauriei(J.yokoscensis)
ホソコウガイゼキショウ J. fauriensis
エゾホソイ(リシリイ・カラフトホソイ) J. filiformis(J.curvatus, J.brachyspathus
var.curvatus, J.brachyspathus;絲狀燈心草)
J. glaucus(片髓燈心草)
ドロイ(ミズイ) J. gracillimus(J.compressus var.gracillimus;
扁莖燈心草・細燈心草)『中国雑草原色図鑑』350・『中国本草図録』Ⅸ/4411
ハマイ(オオイヌイ) J. haenkei(J.arcticus var.alaskanus;濱燈心草)
J. himalensis(喜馬燈心草)
フサヒメコウガイゼキショウ J. hybridus
ミヤマホソコウガイゼキショウ(チシマホソコウガイゼキショウ) J. kamschatcensis
(J.faurieanus subsp.kamschatcensis)
タチコウガイゼキショウ J. krameri(短喙燈心草)
J. leucanthus(甘川燈心草)ヒマラヤ産
J. leucomelas(長苞燈心草)
ニセコウガイゼキショウ J. marginatus
イトイ J. maximowiczii(J.triflorus;長白燈心草)
エゾノミクリゼキショウ(クモマミクリゼキショウ) J. mertensianus
J. minimus(矮燈心草)
J. modestus(分枝燈心草)
J. modicus(多花燈心草)
ニッコウコウガイゼキショウ J. nikkoensis(J.papillosus var.minor)
タイワンイ J. ohwianus
アオコウガイゼキショウ(ホソバノコウガイゼキショウ) J. papillosus(乳頭燈心草)
コゴメイ J. polyanthemus オーストラリア原産、日本には帰化
エゾイトイ J. potaninii(J.luzuliformis var.potaninii;單枝燈心草)
絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
J. prismatocarpus
subsp. prismatocarpus(笄石菖)
コウガイゼキショウ subsp. leschenaultii(J.leschenaultii,
J.monticola, J.latior, J.hizenensis;
江南燈心草・野燈心草・水茅草)
subsp. teretifolius(圓柱葉燈心草)
セキショウイ J. prominens
J. przewalskii(長柱燈心草)
ホソイ J. setchuensis(野燈心草)『中国本草図録』Ⅲ/1420
ホソイ var. effusoides(擬燈心草・野燈心)
J. sikkimensis(錫金燈心草)ヒマラヤ産
J. sphacelatus(枯燈心草)
ヤチイ J. stygius
マンシュウクサイ J. taonanensis
クサイ(シラネイ) J. tenuis(J.macer;堅被燈心草)
J. thomsonii(展苞燈心草)ヒマラヤ産
ホロムイコウガイ J. tokubuchii
オテダマゼキショウ J. torreyi 北アメリカ原産
タカネイ J, triglumis(貼苞燈心草)
オニコウガイゼキショウ J. validus
ハリコウガイゼキショウ J. wallichianus(J.koidzmii;針燈心草)
ミヤマゼキショウ J. yakeisidakensis 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
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訓 |
漢名 燈心草・燈芯草は、むかし茎の髄を灯心に用いたことから。〔伝統的に燈心草と記してきたが、『植物智』は燈芯草と記す。〕
石龍芻は、李時珍『本草綱目』に、「刈り草の包み束ねたものを芻と曰う。此の草、水石の處に生じ、以て刈り束ねて馬を養うべし。故に之を龍芻と謂う」と。 |
『本草和名』石龍芻に、「和名宇之乃比太比、一名大都乃比介」と。
『倭名類聚抄』に、石龍蒭は「和名宇之乃比太非」と、莞は「漢語抄云、於保井」と、藺は「和名為、辨色立成云鷺尻刺」と。
『大和本草』藺に、「順和名ニ藺ヲ井ト訓シ、又鷺尻刺ト訓ス・・・今俗鷺尻指ト云物、水草ニテ三角アリ、ヨハシ、爲レ席ヤハラカナリ、ヤフレヤスシ、又草履トス」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』11に、「石龍芻 コヒゲ」「龍常草 タツノヒゲ ジヤノヒゲ江州 カンズゝキ種樹家 キリギリスサウ和漢三才図会 ノススキ同上」「燈心草 ヰ古名 ヰグサ仙台 ユグサ南部 アミ勢州 ヒメスコ薩州。穣ノ名ハ トウシミ和名鈔 トウシン トウスミ勢州 ジミ肥前 トウジミ同上 トウシメ南部 トウスン雲州 ヰノミ佐州」と。 |
「和名ゐノ意ハ席ニスル物ナレバ居ノ義ナルベシ(和訓栞)トアレド疑フベシ。本種ニ藺ノ字ヲ用うれど確實ナラズ」(『牧野日本植物圖鑑』)。
藺(リン,lìn)の字は、『説文』に「藺、莞(カン,guān)の属」とあり、『玉篇』に「藺、莞に似て細し。席を為るべし」とあり、今日の中国でも燈心草とする。なお、莞はフトイ(或はショウブ)。 |
説 |
北海道・本州・四国・九州・琉球・朝鮮・極東ロシア・遼寧・吉林・黑龍江・河北・陝甘・山東・華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・チベット・アッサム・インドシナ・臺灣・マレシア・ニューギニア・インドシナに分布。 |
日本で畳表用に用いるものは、栽培品種コヒゲ 'Utilis'(f.utilis;石龍蒭)。全国で栽培するが、岡山・広島・熊本の産が多い。 |
誌 |
中国では、茎の髄或は全草を 燈心草(トウシンソウ,dēngxīncăo)と呼び、薬用にする。また地方により、コウガイゼキショウ Juncus prismatocarpus subsp. leschenaultii (J.leschenaultii; 水茅草)の茎の髄、或はホソイ
J. setchuensis(野燈心草)の全草を、燈心草として用いる。『中薬志Ⅲ』pp.92-94 『全國中草藥匯編 上』pp.321-322 『(修訂) 中葯志』IV/352-354 |
日本では古くから栽培されたが、書院造りが行われた室町時代以後、ことには畳が一般に普及した江戸時代に広く栽培されるようになり、多くの栽培品が作り出され、備中・備後が特に有名であった(備中表・備後表)。 |
『万葉集』にでる大藺草は、フトイ。 |
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