辨 |
フキ属 Petasites(蜂斗菜 fēngdŏucài 屬)には、北半球の温帯に18-19種がある。
P. formosasus(臺灣蜂斗菜) 臺灣産
P. japonicus
フキ var. japonicus(蜂斗菜)
フイリブキ 'Variegatus'
アキタブキ(エゾブキ) var. giganteus(P.giganteus)
北海道・本州岩手以北・千島・樺太・朝鮮産
ニオイカントウ P. pyrenaicus(P.fragrans) 地中海地方原産、日本には昭和初期に観賞用に渡来
P. tricholobus(毛裂蜂斗菜) 山西・陝甘・青海・西南・チベット産
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キク科 Asteraceae(菊 jú 科)の植物については、キク科を見よ。 |
訓 |
葉柄をふき、花茎をふきのとう(薹)と呼ぶ。 |
『本草和名』蕗に、「和名布々岐」と。
『倭名類聚抄』に、蕗は「和名布々木」、款冬は「和名夜末不々木、一云夜末不木」、蕺は「布木」と。
『大和本草』に、「款冬{フキ}」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』に、「フキノトウ フキノヂイ河州 フキノシウトメ和州 バツカイ南部松前 バシカイ南部」と。 |
日本では、フキの漢字としてしばしば款冬を当てるが、誤り。款冬(カントウ,kuăndōng)は フキタンポポである。
『植物學大辭典』(1918、商務印書館)はフキを款冬とする。日本語の輸入であろうか。 |
属名は、ギリシア語「日除け帽子」から。 |
説 |
本州(岩手以南)・四国・九州・琉球・朝鮮・華東・山東・湖北・陝西・四川・ロシア沿海地方に分布。
雌雄異株。 |
日本では古い蔬菜、花序・花茎・葉柄を食う。
栽培品種に愛知早生フキ(三倍体)・秋田フキ・水フキの三がある。商品として流通するフキの9割を占めるのは愛知早生フキ、ただし雄株のみ。 |
誌 |
中国では、全草・根状の茎を薬用にする。 『全国中草葯匯編』上/878 |
『新撰字鏡』(ca.901)に初見、『延喜式』(927)には蔬菜として載る。 |
アキタブキの栽培は、19世紀中葉から。愛知早生フキは、明治中葉に見出されて 全国に広がった。
フキの砂糖漬けは、明治12年に秋田で始められた。 |
蕗(ふき)の葉に丁寧にあつめし骨くづもみな骨瓶(こつがめ)に入れしまひけり
(斎藤茂吉「死にたまふ母」(1913)より。『赤光』所収)
十尺(とさか)よりも秀でておふる蕗のむれに山がはのみづの荒れてくる見ゆ
(これはアキタブキであろう。1932志文内,斎藤茂吉『石泉』)
まぼろしに現(うつつ)まじはり蕗の薹(たう)萌ゆべくなりぬ狭き庭のうへ
枯れ伏しし蕗にまぢかき虎耳草(ゆきのした)ひかりを浴みて冬越えむとす
(1937「庭前」,齋藤茂吉『寒雲』)
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