辨 |
オダマキ属 Aquilegia(耬斗菜 lóudŏucài 屬)には、北半球の温帯を中心に約70種がある。
A. alpina(高山耬斗菜) アルプス・アペニン産
A. amurense(阿穆爾耬斗菜) 『中国本草図録』Ⅸ/4106
A. atrovinosa(暗紫耬斗菜)
A. bertolonii(貝托洛耬斗菜) アルプス産
A. buergeriana
ヤマオダマキ var. buergeriana(日本耬斗菜)
マルザキヤマオダマキ f. ecalcarata
キバナノヤマオダマキ f. flavescens
オオヤマオダマキ var. oxysepala(A.oxysepala, A.vulgaris var.oxysepala;
尖萼耬斗菜) 朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・極東ロシア・南シベリア産
キバナオオヤマオダマキ f. pallidiflora(F.viridialba)
カナダオダマキ A. canadensis(加拿大耬斗菜) 北アメリカ産
キバナオダマキ A. chrysantha(黃花耬斗菜)
ソライロオダマキ A. coerulea(變色耬斗菜) 米国コロラド州の州花
A. discolor スペイン産
A. ecalcarata(無距耬斗菜・野前胡・黄風・千年耗子屎) 『中国本草図録』Ⅴ/2081
A. flabellata
オダマキ var. flabellata(扇形耬斗菜・洋牡丹)ミヤマオダマキの栽培品種
ホウカソウ f. humiliata
ミヤマオダマキ var. pumila(A.japonica;白山耬斗菜)
キバナミヤマオダマキ f. flavida
タマザキミヤマオダマキ f. globularis
リシリオダマキ f. konoi
ニシキオダマキ A. formosa(紅花耬斗菜) 北アメリカ産
A. glandulosa(大花耬斗菜)
A. incurvata (秦嶺耬斗菜・銀扁担・燈籠草)
A. japonica(長白耬斗菜・白山耬斗菜) 『中国本草図録』Ⅳ/1617
A. lactiflora(白花耬斗菜)
ツメナガオダマキ A. longissima(長距耬斗菜)
ダイセンオダマキ A. × maruyamana
A. moorcroftiana(腺毛耬斗菜)
オオヤマオダマキ A. oxysepala (A.buergeriana var.oxyspala;尖萼耬斗菜・漏斗菜)
一説にヤマオダマキの変種。『中国本草図録』Ⅲ/1121
f. pallidiflora(黃花尖萼耬斗菜) 『中国本草図録』Ⅵ/2581
カラフトヒメオダマキ A. parviflora(小花耬斗菜・血見愁・猫爪花・漏斗菜)
『中国本草図録』Ⅸ/4107
クモマオダマキ A. pyrenaica(比利牛斯耬斗菜) ピレネー産
A. rockii(直距耬斗菜) 『雲南の植物Ⅰ』63・『雲南の植物』90
A. sibirica(西伯利亞耬斗菜)
アカアシオダマキ A. skinneri(二色耬斗菜)
A. viridiflora
クロバナオダマキ var. atropurpurea(A.atropurpurea;紫花耬斗菜)
ウスキオダマキ var. viridiflora(耬斗菜・綠花耬斗菜・血見愁)
遼寧・吉林・黑龍江・華北・山東・西北・極東ロシア・南シベリア産
『中国本草図録』Ⅱ/0555・Ⅸ/4106・『中国雑草原色図鑑』62
セイヨウオダマキ A. vulgaris(歐耬斗菜)
トウヤマオダマキ A. yabeana(華北耬斗菜) 『中国本草図録』Ⅳ/1618・『中国雑草原色図鑑』62
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漢名を耬斗菜(ロウトウサイ,lóudŏucài)と呼ぶものは、広義にはオダマキ属の総称、狭義には その中の一種 A.viridiflora(綠花耬斗菜)を指す。
ただし、園芸的にはセイヨウオダマキを言うことが多い。 |
キンポウゲ科 Ranunculaceae(毛茛 máogèn 科)の植物については、キンポウゲ科を見よ。 |
訓 |
和名のオダマキは、花の形が苧環(おだまき。紡ぎ糸を、中が空洞になるように丸く巻きつけた糸巻き)の形に似ていることから。イトクリ(糸繰)も同義。 |
説 |
観賞用に広く人家に植えられている。 |
誌 |
紡織の具としての苧環は、王朝以来詠われている。
いにしへの しづのをだまき いやしきも よきもさかりは ありし物也
(よみ人しらず、『古今和歌集』17。しづは倭文と書き、古代の布の一種。)
いにしへの しづのをだまき 繰りかへし 昔を今に なすよしも哉
(『伊勢物語』32段)
静御前(源義経の愛妾)は、文治2年(1186)鎌倉の若宮八幡宮に参詣し、源頼朝の前で、
吉野山 嶺の白雪 踏み分けて 入りにし人の 跡ぞ恋しき
しづやしづ 賎(しづ)のをだまき 繰り返し 昔を今に なすよしもがな
と歌い舞った(『吾妻鏡』・『義経記』)。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻四・五「草花 春之部」に、「おだまき 中末。花形つりがね草のごとく下へさかりて咲。色むらさき、葉ハしやくやくのごとし」と。 |
山いづる太陽光を拝みたりをだまきの花咲きつづきたり
死に近き母が目に寄りをだまきの花咲きたりといひにけるかな
(斎藤茂吉「死にたまふ母」(1913)より。『赤光』所収)
小園のをだまきのはな野のうへの白頭翁(おきなぐさ)の花ともににほひて
(1945「疎開漫吟」,齋藤茂吉『小園』)
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