辨 |
ビワ属 Eriobotrya(枇杷 pípá 屬)には、東&東南アジア・ヒマラヤの暖温帯・亜熱帯に約25-30種がある。
E. cavaleriei(大花枇杷) 江西・福建・兩湖・兩廣・四川産
タイワンビワ E. deflexa(臺灣枇杷) 臺灣・廣東産
『中国本草図録』Ⅸ/4161・『週刊朝日百科 植物の世界』5-142
ビワ E. japonica(枇杷)
E. prinoides(櫟葉枇杷)
E. serrata(齒葉枇杷) 『雲南の植物Ⅲ』121
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バラ科 Rosaceae(薔薇 qiángwēi 科)については、バラ科を見よ。 |
訓 |
「和名ハ漢名枇杷ノ音ナリ、枇杷ハ樂器ノ琵琶ニ似タル故名ク」(『牧野日本植物圖鑑』)。 なお、琵琶(ビワ,pípá)は西域伝来の楽器。 |
『本草和名』枇杷に、「和名比波」と。
『倭名類聚抄』枇杷に「琵琶二音、此間云味把」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』枇杷に、「ビハ和名鈔 ビヤ本草類編選 コフクベ同上」と。 |
説 |
湖北・四川原産、野生品の実は直径約2cm。
広く東~南アジアの暖地で栽培、日本では本州(中西部)・四国・九州の沿岸部・石灰岩地に野生化。 |
誌 |
中国では、葉を枇杷葉(ビワヨウ,pípáyè)と呼び薬用にする。『中薬志Ⅲ』pp.284-286 『全國中草藥匯編 上』pp.491-492 『(修訂) 中葯志』V/90-93
日本では、生薬ビワヨウはビワの葉である(第十八改正日本薬局方)。
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果実を食用にし、古くから栽培。中国では6世紀までには品種が分化していた。 |
日本では、正倉院文書に記され、『延喜式』『本草和名』などにその名が載る。 |
『古今集』(ca.910)10物名に 紀乳母(きのめのと)が「さゝ(笹)・まつ(松)・びは(枇杷)・はせをば(芭蕉葉)」を詠いこんだ歌が載る。
いさゝめに 時まつまにぞ 日はへぬる 心ばせをば人に見えつゝ
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「枇杷は諸菓に先立ちて熟しめづらし。・・・余地あらば多くもうゆべし。都近き所にては利潤ある物なり。・・・又木の節なく直なる所木刀にして無類の物なり」(宮崎安貞『農業全書』1697)。 |
果実としての栽培が盛んになったのは、天保・弘化(1830-1848)頃、中国から大型の果実をつける品種茂木(もぎ)が伝えられてから以降のこと。 |
枇杷の木に黄なる枇杷の実かがやくとわれ驚きて飛びくつがへる
枇杷の実をかろくおとせば吾弟(わおと)らが麦藁帽にうけてけるかな
(北原白秋『桐の花』1913)
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